Feb.10.2009
Tom`s F20プロトタイプエンジンの登場
F20はまったく新しいレースカテゴリーです。エンジンについても、直径20mmのリストリクターの装着を求めるだけで、形式や排気量の制約はまったくありません。直径20mmのリストリクターは約120馬力を許容しますから、回転数の増加と共に増えるフリクションやエンジンそのものの大きさと重量を考慮すると、レシプロNAエンジンの場合、1リットルか1.5リットル程度が最適の排気量となります。
直径20mmのリストリクター以外自由と言うことは、エンジンの下半分を作り替えてドライサンプとしたり、エンジンそのものをフレームとして活用することも可能です。
最適なF20エンジンを目指して、JMIA会員のエンジンビルダーの方々は、早速F20エンジンの開発に取りかかりました。
*注:REAL RACE Vol.2を参照してください
最初にF20エンジンの開発をスタートしたのはTom`sでした。直径20mmのリストリクターの装着を義務つけているだけですから、様々なエンジンが考えられますが、Tom`sはヴィッツやIQに搭載されている排気量1リットルの1KR-FE型3気筒エンジンをベースとしました。
F20エンジンのベースとして、Tom`sが1KR-FEを選んだ理由は、3気筒であるため、非常にコンパクトで軽いことだけではありません。通常より1気筒少ない3気筒であることで、回転数の増加に伴って増えるフリクションが少なく、最近では珍しい、ロッカーアームを使わないで、カムシャフトが直接バルブを駆動するエンジンであることでした。
既にプロトタイプのシャシーの開発が進んでいたため、Tom`sとしては不本意だったかもしれませんが、出来る限り早く完成させることを優先して、開発することとなりました。
コンパクトで軽いことはメリットですが、1KR-FE型エンジンは、ヴィッツやIQ等が搭載していることでも明らかなように、好燃費をテーマとした最新の省エネエンジンですから、レース用として好性能を追求する場合、総てが都合が良い訳ではありません。
1KR-FE型エンジンのインテークはカムカバーと一体の樹脂製ですから、そのままでは思うように手を加えることも出来ません。そのままでは、スロットルも作り付けの1スロットルしか使えません。好性能を追求することが難しいだけでなく、エンジンそのものをフレームとして活用する場合、通常オイルパンとカムカバーによって剛性を受け持つこととなりますが、樹脂製のカムカバーにフレームとしての機能を期待することは出来ません。
出来れば、完全に新しいカムカバーをアルミニウムで作り直したいところですが、充分な時間がなかったため、Tom`sは、樹脂製のカムカバーから丁寧にインテイクパイプを切り取って、新たにインテイクパイプを設けると共に、気筒毎スロットルを設けました。
もちろん、カムカバーによって剛性を受け持たせることは出来ませんが、好性能を追求出来るインテークシステムを実現することが可能となりました。
出来る限り早く完成させる必要から、Tom`sは、出来れば最初に作るプロトタイプエンジンに、インテイクを中心とした内部の開発だけとしたかったことでしょう。しかし、開発を進めるに伴って、スタンダードのままではオイルを充分に潤滑出来ないことが明らかとなりました。
ロードカーエンジンは、小さなエンジンルームに納めるため、斜めにマウントされる場合が少なくありません。横置きFFの1KR-FE型エンジンも前方に向けて斜めに搭載されています。横置きのエンジンを縦置きとした場合、左側に傾いて搭載されることとなってしまいます。
レースで使う場合強力な横Gが加わりますから、左側にオイルパンが傾いていると、右方向に横Gが加わった場合、充分にオイルを吸い上げることが出来ません。
そこで、エンジンの下半分は新たに作ることとなりました。直立にマウントするだけでなく、もちろんドライサンプですから、エンジンの下半分は上下に薄くデザインされましたから、エンジンは非常に低い位置に搭載することが可能となりました。
新たに作られた床下部分は、もちろん、充分な剛性を受け持つようにデザインされました。カムカバーの製作が間に合わないため、リア周りの剛性を完全にエンジンのみで受け持つことは出来ませんが、新たに作られた床下と、エンジン本体に設けられたマウントによって、既に大きな剛性を受け持つことが可能となっています。
*注:剛性を受け持つため、フレームとしてデザインされた床下をご覧ください。
こうして年末にやっとプロトタイプエンジンは完成しました。現在テストベンチによる開発が行われている段階ですから、性能云々を言うことは出来ませんが、テストベンチでの開発が一段落次第童夢製F20に搭載されてテスト走行が行われることとなります。超コンパクトなTom`s製1リットル3気筒エンジンが高性能を発揮するのを期待して下さい。
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