当初、軽四のエンジンを使う事を前提に「F660」としてスタートした技術競争を前提とした新カテゴリー構想は、パワー不足やM/Tが少ないなどの理由でリッターカーのエンジンを使う「F1000」となり、エンジンチューニングを野放しにすると開発費が青天井になるという心配から、リストリクターで規制する「F20」に落ち着き、2種類のモノコックと3台のプロトタイプを製作しましたが、この度、ぶれまくりは日本の政治並みとのお叱りは覚悟の上、理事会で慎重審議の結果、F20プロジェクトに先んじて、来季よりモノコックにカーボン素材の使用が認められることになった「F4」への参入を優先することに決めましたのでお知らせいたします。
F20を立ち上げなくてはならなかった理由。 日本自動車レース工業会(JMIA)では、安全面に対する配慮より、入門用フォーミュラ・レーシングカーにおいては、スペース・フレームとアルミ・モノコックは使用を控えるべきと言う立場を取っておりますので、従来は、FJやF4には関与していませんでした。 そうなると現在の日本で、自動車開発技術を競い合えるカテゴリーと言うとF3とSGTしかありませんが、しかし両者とも車両を開発するとなると年間予算は億単位になりますし、いろいろな設備等のインフラも必要となり、事実上、参入は不可能です。 だから、レーシングカーの開発を夢見る初心者の入門用カテゴリーとして、是非ともF20を立ち上げる必要がありました。
F4に優先的に参入することになった理由。 しかしこの度、いろいろ紆余曲折はあったものの、2010年よりF4へのカーボン素材の使用(モノコックのみ)が認められることになりました。 そうであれば、もともとF4は技術的自由度の高いカテゴリーなので、まさに、F20で目指していた開発技術を競う自動車レースが久々に復活することになります。 また、F20では、開発費や車両価格の高騰を避けるためにリストリクターを20mmに制限していましたが、F4には販売価格制限があり、図らずも同じような価格帯となりますから、かなりの部分で類似した車両となります。 そこでJMIAとしても、せっかく復活した開発技術を競いあえる自動車レースであるF4を、この際、一気に発展振興させて、F20が目指していた理想的な環境構築への近道としたいと考え、JMIAの理事会において協議を重ねた結果、鋭意、F4への参入計画を進めることになりました。
F20はどうするのか? もともと、F20のパーツにFJやF4のパーツを多数流用しているように、ほぼ同クラスのシャーシとなりますから、各社が鋭意F4パーツの開発を進めるということは、すなわちF20用のパーツが充実していくという事になり、F4への参入はF20への有効な準備段階とも言えます。 しかし、今後のF4の動向にもよりますが、たぶん、競争がエスカレートしていけばアマチュアには手の出ないカテゴリーになって行くでしょうし、安全上の見地からも、早期にFJやSFJのカーボン・モノコック化を推進すべきですから、いずれ、FJやSFJからF4までのしっかりとした体系を構築していく必要があると考えています。 その中で、F20がどのような役割を果たせるのか不必要となるのかは今後の動向を見極めつつ決めていきたいと考えています。
新しいFJのイメージ F4が本格的なレーシングカーに昇格するにつれて、FJやSFJにも、新しいF4に直結したより高レベルな車格が求められるようになるでしょう。 ただし、車格や安全性の向上は歓迎されても、それによる価格の高騰は、自動車レースを目指す人たちの最初の入り口の間口を狭くしてしまいます。 車格の向上とコストダウンは全く相反する要素ですから両立することはありませんが、このJMIAモノコックの耐久性(単板構造でほとんど劣化しない)を利用して、FJからF4までをトータルに考えると少し光明が見えてきます。
現在のFJ/SFJに代わる1リッタークラスの新たなカテゴリーを作り、F4にステップアップする時には、モノコックを始めかなりの部品を流用して段階的な発展が可能な連結したシステムを構築したいと考えています。 つまり、新FJを購入して1~2年レースに参加した後、F4へのステップアップ時に不要になる部品を売却し、F4に必要な部品を購入してF4レースへの参加を開始するという合理的な方法です。これにより、FJからF4までをトータルで考えるとシャーシのクォリティの向上分は消化できそうです。別途、検討を進めています。
問題はモノコックです。 「JMIAモノコック」の開発を始めた動機はF20の為だけではなく、FJやF4のように、未だにコスト的な理由で採用を禁止している入門用フォーミュラが存在し、アマチュア・ドライバーが危険なレーシングカーでのレース参加を余儀なくされている現状の改善をも目指していました。
この「JMIAモノコック」は、発明と言えるほど画期的な発想と長期に亘る試験期間を経て完成したもので、小型レーシングカー用としては、剛性、安全性、耐久性などすべての面で従来品と同等または優れた特性を示す上、既存のアルミ・モノコックを下回る価格(アルミ・モノコック135万円、JMIAモノコック122万円)で販売が可能な優れものでしたから、早速、FJ/F4協会にワンメイクとして導入するように提案しましたが、何故かなかなかスムーズには受け入れられない状況が続いていました。 この拒絶的な反応は意外でしたが、この122万円というコストの計算も、FJ/F4/F20にワンメイクとして導入されることを前提に算出したものであり、また、JMIAモノコックは122万円の低価格を実現するためにいろいろな手段を講じていますが、そのうちの一つがワンメイクによる妥協です。ワンメイクというのは性能的なリスクも公平に分かち合う訳ですから、設計上、コストアップとなるような要因には妥協してでもコストダウンを図ることが出来ますが、しかし、来期からのF4のように自由競争となると、やはりそこは技術の戦いの中枢部分ですから極限の性能を追求するのが正しい戦い方です。 つまり、F20とは全く異なるコンセプトのモノコックが必要となる訳で、現在、仕方なくF4用の新たなるモノコックの開発に着手しているところです。 結果的に、122万円のモノコックはプロトタイプの段階でお蔵入りとなりますが、現在開発中のF4用モノコックも、JMIAモノコックと同様の製法を踏襲して極力コストダウンを図り140万円前後の価格帯で販売出来ることを目標に開発を進めています。
「JMIA認定部品」 紆余曲折の末、JAFはF4にのみCFRPモノコックの使用を認めましたが、従来、価格の高騰を抑えることを理由にカーボン素材の使用を禁止していたにも関わらず、シャーシの上限価格を据え置いたままカーボン素材の使用を認めることには矛盾があります。 まして、ワンメイクではなく自由競争と言うのですから信じがたい変革です。また、レギュレーションに強度要件の記載が無くクラッシュ・テストに関しても記述されていません。 我が国に、充分なCFRP製モノコックの開発経験や技術を持つ企業はほとんどありませんから、つまり、モノコック・タブという非常に高度な工業製品を野放しに誰でも作れ、また、何のチェックも無しに販売出来る訳で、人を守るという役目も負っている重要部品としてははなはだ自由度の高い奔放?な取扱いとなっています。 まあ、はなはだ怖い話ではありますから、レギュレーションはレギュレーションとしても、JMIAでは独自の検査基準を設け、安全と認められる部品には「JMIA認定部品」の認定を与え、ユーザーに安心して使っていただける体制を構築していきたいと考えています。
いろいろ問題はありますが、来季からのF4は期待大です。 いろいろ問題はありますが、結果的に、この2010年からのF4は、まさにJMIAが目指していた開発技術を競いあえる自動車レースと変貌します。 いろいろな問題は徐々に解決していくとして、まずは、この久しぶりの登場となった技術開発競争としての自動車レースを楽しみましょう。そして、充分に楽しむためには盛り上げなくてはなりません。 成功すれば、F20の当初に夢見ていた1970~80年代のFJレースの賑わいを取り戻せるチャンスとなるかもしれませんし、コンストラクターやエンジニアが育ち、レーシングカーは国産が当たり前になる時代が到来するかもしれません。大いに期待しています。
みんなで参加しましょう。盛り上げましょう。 JMIAではF4用CFRPモノコックを供給します。また、会員企業各社が手分けして各種パーツを製作販売します。もちろん、エンジン/ギアボックスも用意しています。 従って、完成車を購入してレースに参加することはもちろん、モノコックを始めとする必要なパーツだけを購入し、自作できるパーツは自作してオリジナル・シャーシを制作して参加することも可能です。 レーシングカーの開発経験を持たないチームでも、完成車を段階的に改造していくことも可能です。 各種図面類も公開しますし解りやすいレギュレーションの解説書も用意しますから、キットカーを組み立てる感覚で始められますし、最終的には、完全なオリジナルマシンの製作にまで発展させることも容易です。
今まで、観戦するだけのレースファンだった皆様におかれましても、一歩踏み込んで本当の自動車レースに触れることができる格好の機会となるでしょうし、マシンと技術の戦いを満喫しつつ、この際、何らかの形で「技術の戦いとしての自動車レース」に参画をお願いしたいと思っています。
参戦コストについて。 F4はキャップ・プライスが制定されており、シャーシ525、エンジン210、T/M79万円などと決まっています。 従って、完成車の新車を購入しても800万円台の予算規模であり、レース予算は、西日本を中心としたシリーズ戦に参加するとして年間420~万円くらいということなので、コンストラクターへの第一歩としてはお手頃ではないでしょうか。 車両の開発や参戦に関してのご相談はjmia@jmia.jpまでどうぞ。