Mar.04 2011
2011 F4開幕直前情報 B-MAXはオリジナルマシンを開発
●新生F4協会誕生
昨年F4シリーズは、JMIA UOVAカーボンモノコックが登場する等、久しぶりに熱いシーズンが実現しました。最後のレースが12月に行われたことから、シーズンオフは3ヶ月にも満たないため、早くも2011年のF4シリーズ開幕戦が近づいてきました。 昨年末、F4シリーズを統括するF4協会では、新たにR&Sportを率いる山口義則氏が会長に就任して、大々的な改革をスタートしたようです。しかし、開幕戦が行われる3月までに総ての改革を実施するのは難しいようで、まったく同じ3月13日、岡山では西日本シリーズの開幕戦が、ツインリンクもてぎでは東日本シリーズの開幕戦が行われます。新生F4協会では、今後様々な改革を推進されることとなるようです。 JMIAは、全面的に新生F4協会の活動を支援いたします。
●安全性と環境に配慮したレギュレーション
昨年丈夫なカーボンファイバーコンポジット製モノコックの使用が可能となりましたが、それだけで充分な安全性を実現することは不可能です。ほとんどの方々は驚く出来事であると思いますが、昨年までのF4は、ノーズにカーボンファイバーコンポジットを使った耐クラッシュ構造を取り付けることは非合法でした。何とアルミニウム板を組み合わせた箱が、耐クラッシュ構造と称して取り付けられていました。これまでのクラッシュの結果によって、アルミニウム板を組み合わせた耐クラッシュ構造は、ほとんど効果が無く、方便に過ぎないことが判明しています。そのため、JMIAでは、カーボンファイバーコンポジット製モノコックと同時にカーボンファーバーコンポジット製の耐クラッシュ構造の導入を主張しましたが、昨年は導入することは認められませんでした。
今年、やっとカーボンファイーバーコンポジット製の耐クラッシュ構造の導入が認められました。そのため、準備が出来次第、既に製造されたマシンも含めて、次々とカーボンファイバーコンポジット製の耐クラッシュ構造をノーズに取り付けることとなるでしょう。 残念なことは、カーボンファイバーコンポジットでなければ実現出来ないような、充分な安全を確保出来る安全規定が明文化された訳ではないことから、従来のアルミニウム板を組み合わせた耐クラッシュ構造を取り付けたマシンも、多数走ることでしょう。
また、F4のエンジンはドライサンプですが、これまでエンジンとミッションの間のベルハウジング内にオイルタンクを設けることが許されなかったため、オイルタンクはエンジン側面にレイアウトされていました。もし、クラッシュして、オイルタンクが破損した場合、火災の原因となりますから、丈夫な鋳造アルミニウム製のベルハウジングの中にオイルタンクを設置することが求められていました。 今年やっとベルハウジング内にオイルタンクを設置することも、やっと認められました。 現在空っぽのベルハウジングの中にオイルタンクを設けるため、カーボンファイバーコンポジット製の耐クラッシュ構造よりも、早期に普及すると考えられています。
近年環境へ配慮して、様々なカテゴリーで触媒の導入が進められていますが、2011年のシリーズからF4にも触媒の装着が義務付けられました。 既に触媒を装着したマシンが走行していますが、エンジンベンチ上での計測で1~2馬力ダウンと言う程度の影響のようで、エンジン性能はほとんど変わらないようです。 最も大きな影響は、触媒の分だけ後ろが重くなることと考えられています。
●ZAPスピードの勢い
昨年夏に登場して、土屋祐輔のドライブによって、東と西の2つのシリーズの後半の4つの総てのレースで優勝したZAP F108は、昨年後半最も注目を浴びたF4マシンでした。早くも昨年終盤、山口大陸と「見栄張る週末派」が購入して参戦しています。
今年もZAPスピードの勢いは変わらないようで、昨年土屋祐輔が操ったZAPスピード自身のF108には、昨年スーパーFJで活躍して、スカラシップを獲得した平川亮が乗り組み西日本シリーズに参戦します。強力なZAPスピードのサポート体制を考慮すると、西日本シリーズのチャンピオン候補と言えるでしょう。
筑波サーキットを拠点とするZAPスピードは、30台以上のレーシングカーをメンテナンスする巨大ガレージですが、ZAPスピード同様筑波サーキットを拠点とするウインズも、ZAPに負けない大規模のメンテナンスガレージです。
ウインズも、UOVAカーボンモノコックF4と2リットルエンジンの導入を計画していたようですが、最初の1台として、ZAP F108を購入しました。
ZAPは勢いがあるようで、他にも何チームかが導入を計画しているようです。
ZAPスピードは、準備が出来次第、ベルハウジング内のオイルタンクとカーボンファイバーコンポジット製の耐クラッシュ構造を導入する計画であるようです。
●B-MAXが実戦的なオリジナルマシンを開発 エースドライバーは関口雄飛
昨年東京R&DのRD10Wをドライブした西本直樹は、西日本シリーズのチャンピオンに輝くと共に、JAF・GPで行われたコンストラクターズ日本一決定戦で優勝しました。
今年東京R&Dは、昨年の様なワークス体制での活動は行わない方針です。東京R&Dは、現在スーパーFJで圧倒的なシェアを誇るだけでなく、F4でも真っ先にUOVAカーボンファイバーコンポジットモノコックを導入して、シェアを拡大しています。そのため、今年の東京R&Dは、カスタマーチームのサポートに徹することを決定したようです。
昨年B-MAXは2台のRD10Wを導入して、ジェントルマンドライバーとして活動しました。ジェントルマンドライバーらしく、往年のジョーダンF1やBMW(ウイリアムズ)F1と似た派手なカラーリングによって、ファンも多かったのではないでしょうか?
B-MAXは様々なレース関連パーツも製作する部品メーカーですから、1年間活動する間、自分たちの嗜好に合ったオリジナルF4マシンの開発を決心しました。
ちょうど東京R&Dが、カスタマーサポートへ専念することを決定したこともあって、東京R&DもB-MAXの計画に全面的に協力することとなりました。
昨年UOVAカーボンファイバーコンポジットモノコックを使用するF4が登場した際、丈夫なカーボンファイバーコンポジットモノコックに対して、リアのサブフレームの剛性の確保が課題となりました。ドライバーもカーボンファイバーコンポジットモノコックに慣れてなかったため、様々な改良型リアサブフレームが登場しました。
B-MAXもいくつかのアイデアを見出していたようです。B-MAXでは、東京R&DだけでなくZAPスピードからもリアサブフレームを購入して実験したようですが、自分達の嗜好にあったオリジナルリアサブフレームの開発を実行しました。
B-MAX製リアサブフレームは、一見ZAPスピードのものと似ていますが、モノコック側のマウント部分が強化されていると共に、エンジンとモノコックの間に、アルミニウムを削り出して作ったブラケットが設けられています。
通常クラッシュした際、サスペンションアームが折れることによって、モノコックやミッションケースへのダメージを防いでいます。しかし、F4にはスーパーFJからステップアアップしてきたばかりの不慣れなドライバーも多数参加するため、思いもかけないアクシデントが発生することもあります。クラッシュの際サスペンションアームが折れない場合、モノコックやミッションケースが壊れてしまうため、B-MAXでは、サスペンションアームのマウント部分をミッションケースに直接設けるのではなく、ミッションケースにアダプターを設けて、不慮のクラッシュに備えるようです。
興味深いことは、B-MAXが空力開発にも積極的であることでしょう。
何とB-MAXではムーンクラフトの風洞を使って独自に空力開発も開始しました。その結果、部分的なモデファイではなく、全面的に新しいボディをデザインすることとなりました。前後のウイング以外の総てのボディが、完全なB-MAXデザインとなります。
残念ながら、開幕戦までに新しいボディは完成しませんが、第2戦には今年走るB-MAXチームの3台のF4の総てが、B-MAXオリジナルボディを纏うこととなります。
今年B-MAXは、東と西の両方のシリーズで合計3台のオリジナルF4を走らせますが、エースドライバーは、昨年F3に参戦した関口雄飛です。関口雄飛は昨年からB-MAXのF4の開発に関わり、JAF・GP前には驚異的なタイムを記録しています。
B-MAXは、関口雄飛を東と西の両方のシリーズにフル参戦させる予定でしたが、3月13日の開幕戦がバッティングしている一方、9月に行われる西日本シリーズ第4戦岡山が、富士スピードウェイで行われるSuperGTともバッティングしているため、開幕戦は西日本シリーズの岡山へ参戦して、9月の西日本シリーズ第4戦は休むこととなりました。
しかし、1レースずつハンディがあっても、関口雄飛がドライブするB-MAXが、東と西の両方のシリーズのチャンピオン候補の最右翼であることは変わらないでしょう。
ちなみに、ジョーダンF1と似たカラーリングで走るのは、東京R&D製ボディを使う開幕戦のみです。このカラーリングを見たいファンは、3月13日岡山へ行きましょう。
東京R&D勢では、吉本晶哉がフジイ商會のRD10Wによって西日本シリーズへのエントリーを決定しました。他にもトヨタテクノクラフト等、RD10Wによって活動するチームがいくつか存在しますが、西と東の開幕戦がバッティングしていることもあって、本格的な参戦は4月以降となるようです。
●ムーンクラフト陣営はタイトル狙い
昨年シーズン後半、吉田広樹がドライブするムーンクラフトMC-090は、素晴らしい速さで走り回りました。西日本シリーズ第3戦鈴鹿で優勝して熾烈な争いを繰り広げましたが、惜しくもタイトル獲得を脱しました。しかし、ツインリンクもてぎで行われたF4日本一決定戦で圧倒的な速さを見せつけて、MC-090の高いポテンシャルを印象付けました。
昨年吉田広樹のドライブによって活躍したレプリスポーツは、現在のところ体制を確定していません。と言うのは、彼らの目標はタイトル争いであって、タイトル争いが出来るドライバーを求めているため、厳しくドライバーを選んでいるからであるようです。
他のチームの多くも準備が遅れているため、西と東で同じ日に行われる開幕戦をパスすることも念頭に置いて、勝てる体制を求めているようです。
全体的にムーンクラフト陣営の準備はスローペースのようですが、メッカが走らせるトヨタエンジンを組み合わせたMC-090は、既にツインリンクもてぎで走り始めました。 ムーンクラフトは他にもMC-090を2台販売しており、準備が出来次第走ることでしょう。
鈴木 英紀 著
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